
こういう駆け引きメインの艦隊戦は大好物のすやまたくじです。
今回はそんな戦いが描かれるSF戦記アニメ『銀河英雄伝説 Die Neue These(ディ・ノイエ・テーゼ)』の感想レビュー評価・考察を。
この記事で分かる目次
銀河英雄伝説 Die Neue Theseとは?
- ジャンル:SF、スペースオペラ、架空戦記
- 放送期間:2018年・全12話、セカンドシーズン 2019年・全12話を3回に分けて劇場公開、他旧OVA版と劇場版あり
- アニメーション制作:Production I.G
- キャスト:ラインハルト・宮野真守、ヤン・鈴村健一、キルヒアイス・梅原裕一郎、ユリアン・梶裕貴、フレデリカ・遠藤綾
- 原作:小説・田中芳樹、他コミカライズ版あり
これははるか遠い未来。
西暦2801年、宇宙に進出した人類は銀河連邦の成立を宣言。
が、その繁栄に陰りが見えた宇宙歴310年、国民投票をキッカケに専制君主による銀河帝国が誕生。
銀河帝国皇帝・ルドルフ1世は独裁により一部の貴族が人民を支配する世界を作り上げた。
だが、帝国歴164年その独裁に不満を持つ一部の共和主義者達が帝国支配圏外へ脱出。
自分達こそが銀河連邦の正統な後継者であるとして宇宙歴を復活させ、自由惑星同盟の成立を宣言。
時に宇宙歴527年・帝国歴218年、それから帝国と同盟は150年の戦いを続けていた。
SFアニメでありながらありがちなロボット兵器や未知のエネルギー、異星人などが登場しないのが本作の特徴。
そのため、まったく空想というより、それまでの人類の歴史を宇宙に移したようなドラマとなっているのが魅力です。
ちなみに、銀河英雄伝説 Die Neue These(ディ・ノイエ・テーゼ)はリメイクアニメ。
その前に、1988年~2000年にかけて『銀河英雄伝説』のタイトルで旧OVAアニメがリリースされています。
そのため、略称では新銀英伝やノイエ銀英伝と呼ばれることも。
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常勝の天才と不敗の魔術師を中心に展開する物語
銀河英雄伝説では銀河帝国と自由惑星同盟それぞれに主人公がおり、その二人を中心に描くスペースオペラ。
こちらが銀河帝国側の主人公:ラインハルト・フォン・ローエングラム。
銀河帝国は皇帝と一部の貴族が支配する完全なる独裁国家。
生まれの身分は絶対的であり、貴族になれるのはほぼ白人のみと旧ドイツのよう。
そんな中、ラインハルトは没落した貴族に生まれ、大切な姉を後宮に奪われたことをキッカケに帝国を倒し、現体制を変えることを決意。
帝国軍学校を首席で卒業し、戦場で数々の戦功を挙げたことから異例の出世を果たすことに。
Die Neue Theseの第1話時点では20歳にして上級大将(将官の最高位の階級)
政治・軍事・カリスマ性と全てにおいて秀でており、特に軍人としては『常勝の天才』と呼ばれるほど負け知らずの戦上手。
こちらが自由惑星同盟側の主人公: ヤン・ウェンリー。
自由惑星同盟は銀河帝国に対抗して作られた民主主義国家。
ただし、戦時中のためか現在の日本ほどは自由ではなく、腐敗した中枢により国力は衰え、多数決とは名ばかりの状態となっています(主流に反対すると弾圧される)
ヤンはそんな中、無料で歴史を学べるという理由から士官学校に入学。
本人にその気がなく、さらに嫌がっていたもののその才能を認めれ無理矢理エリートコースへ移されることに。
軍人となってからも多くの功績を残し、第1話時点では29歳で准将(将官の一番下)
戦場においては過去の歴史と心理学を駆使し、不敗の魔術師と呼ばれる数々の戦術で奇跡を起こす存在です。
帝国と同盟の英雄たちによる宇宙戦争
遠い未来の宇宙を舞台にイデオロギーが違う銀河帝国と自由惑星同盟の戦いが繰り広げられる。
その150年に渡る戦いの決着が見られるのがこの銀河英雄伝説。
そして、ラインハルトとヤン以外にも数々の魅力的な英雄が揃っているのも本作の魅力です。
帝国側には、ラインハルトの親友であり主人公二人に並ぶ天才と評されるキルヒアイス、参謀として軍略や政略で活躍するオーベルシュタイン、帝国軍の双璧と呼ばれるミッターマイヤーとロイエンタールなど。
三国志でいえば魏、日本の戦国時代でいえば最盛期の織田信長軍のような人材豊富なのが帝国軍ですね。
逆に政治的腐敗もあってか、自由惑星同盟は帝国と比べると人材は少なめ。
ただし、ヤンが率いる第13艦隊を中心に、周りに優秀な人材を集まっているのが特徴です。
薔薇の騎士(ローゼンリッター)連隊の隊長:シェーンコップ、ヤン艦隊の一翼を常に担うアッテンボロー、ヤンの副官:フレデリカ、遅れてきた天才:ユリアンなど。
こちらは三国志でいえば呉、戦国時代なら武田や上杉軍といった感じでしょうか。
君主が優秀で人材も第一勢力ほどではないにしろ揃っている。
が、元々の人材量で負けている上、年齢の問題などで同じ時代にうまく揃わなかった点などが似ているかなと。
国力や人材面でも負けている自由惑星同盟がヤンを中心にどう銀河帝国と渡り合っていくかという点も本作の楽しみの一つです。
原作小説&旧OVAアニメ版&コミカライズ版を比較
- 作者:田中芳樹
- レーベル:トクマ・ノベルズ、らいとすたっふ文庫
- 刊行期間:1982年~1987年・全10巻で完結済み、他外伝あり
- 旧OVAアニメ:1988年~2000年・本伝110話&外伝52話、他劇場版3作
原作小説は文字たっぷりの上級者向け。
というのも、本編だけで全10巻というボリュームたっぷりなのに加え、よくあるライトノベルと比べてもイラストが少なく文字量が多いから。
普通のラノベの1.5倍ぐらいの文字量がある感覚ですね。
つまり、普通のラノベだったら全15巻ぐらいと日頃からよく本を読む人じゃないと辛いレベル。
では、旧OVAアニメならどうでしょうか?
旧OVAアニメも本伝だけで全110話と中級者向け。
特に今は多くのアニメが1クール・全12~13話ぐらいですからね。
このペースに慣れている人であれば、このボリュームはかなりきつい。
ただ、今は動画配信サービスで好きなペースで視聴できるのでそれで少しずつ観るということもできます。
内容の方は原作小説をほぼ踏襲した形。
逆にリメイク版『Die Neue These』は原作小説や旧OVAアニメの良いとこ取りしたダイジェスト版なので初心者にも見やすい。
観たことないならまずはこちらを視聴し、さらにカットされたエピソードも見たいなら原作や旧OVA版をという順番がおすすめです。
また、新アニメと旧アニメでは絵柄もけっこう違いますね。
新アニメではもともと美形なラインハルト以外もイケメンになっているので、この点は男女で大きく評価が分かれています(笑)
- 漫画版:週刊ヤングジャンプ・2015年~、他複数のコミカライズ版あり
その他にも複数のコミカライズ版もあり。
一番新しいのが2015年から『封神演義』の藤崎竜(ふじさきりゅう)作画により週刊ヤングジャンプに連載されたもの。
こちらも絵柄がまたどちらのアニメ版とも違いますが、内容は原作小説を踏襲したもの。
なので、ダイジェストじゃなくガッツリと銀河英雄伝説を楽しみたいならこの漫画版が一番初心者にはおすすめですね。
マンガは小説よりも読みやすく、アニメよりも短い時間で読めますからね。
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銀河英雄伝説 Die Neue Theseの独自評価・考察
原作にあった魅力的なキャラによる群像劇に加え、新アニメでは映像美という魅力も加わった。
1話目を観たとき、この最新技術を使った映像美や艦隊戦に目を奪われましたね~
そして、英雄たちが繰り広げるドラマは健在。
ここからはその点に絞って独自評価・考察を解説していきます。
魅力的な英雄たちが繰り広げる美麗な艦隊戦
Die Neue Theseと旧アニメの最大の違いは見た目。
キャラの違いもそうですが、艦やメカ、機器やオブジェなどのクオリティが物凄い。
最初に目に付いたのがラインハルトが座る豪勢なイスと背景に見えるそうそうたる艦隊ですね。
そして、3DCGをフル活用した艦の描き方もエグいですね~。
一目見て『おおー!』となりましたw
このクオリティで繰り広げられる艦隊戦は激アツです!
艦だけでなくこういったレーダーや電子機器の描写も熱い。
戦術を立てるときや全体の情報を伝えるときに出てくるこれらの演出もまた戦闘を盛り上げてくれる。
そして、もちろん艦内の描き込みなんかも高レベル。
SF好きやメカ好きには堪らない。
こういった部分だけでもDie Neue Theseは十分に楽しめる作品。
このクオリティで作ったロボットアニメも一度観てみたいですね。
戦術・策略・政治面も熱い
銀河英雄伝説といえば、魅力的な英雄たちによる戦争の駆け引きや権謀術数(けんぼうじゅっすう)、そこから繰り広げられるドラマ。
原作からあるこの魅力もDie Neue Theseではしっかりと引き継がれています。
序盤からいきなりヤンとラインハルトの対決を見せるのはダイジェスト版ならでは。
この初対決で二人の戦術が存分に披露されています。
戦いは艦隊戦だけじゃない。
まともに勝負しても勝てない場合は策略を張り巡らせる。
第6・7話の『イゼルローン攻略』はそんな策略やその前準備などが描かれている象徴的なエピソード。
もちろん、歴史ドラマでよくある敵だけでなく味方と行う派閥争いや情報操作なども描かれています。
そして、銀河英雄伝説で濃く描かれているのが政治面。
歴史作品では欠かせない政治面ですがこれほどまで濃く描かれているのはなかなかない。
第5話の国防委員長の演説
150万の将兵はなぜ死んだのか!
彼らは祖国と自由を守るために命を投げ打ったのだ!
私は一段と声を大にして言いたい!
祖国と自由こそ命を代償として守るに値するものだと!
この偉大な歴史を我々の祖国!
自由なる祖国!
守るに値する唯一のものを守るために我々は立って戦おうではないか!
戦わん、いざ祖国のために!
それに対する戦争で愛する人を失ったジェシカという一般女性の問いかけはそれを象徴するシーン。
私はただ委員長に一つ質問を聞いていただきたくて参ったのです。
私の婚約者は祖国を守るために戦場に赴いて現在はこの世のどこにもいません。
委員長、あなたはどこにいます?
死を賛美なさるあなたはどこにいます?
私は婚約者を犠牲に捧げました!
国民に犠牲を説くあなたの御家族はどこにいます!?
こういった今の政治にも当てはまる考えさせられるテーマを投げかけてくるのも銀河英雄伝説の魅力です。
英雄らしからぬヤン・ウェンリーの魅力
数多くの魅力的な英雄が登場する銀河英雄伝説ですが、その中でも僕のダントツのナンバーワンはこのヤン・ウェンリー。
ラインハルトがその才能で頂点へと登りつめる王道的な天才なら、ヤンは出世するよりもサッサと引退して年金暮らしをしたいと考えている邪道的な天才。
ラインハルト陣営とヤン陣営の人材の差はここも大きいですね。
トップに登りつめて人材も戦略も自由自在になったラインハルトと、そのラインハルトの考えを読みながらも上層部の邪魔などで自由に動けないヤン。
そんな不利な状況でも戦場ではラインハルトと5分に渡り合うヤンの強さにシビれます。
また、普段はやる気がなく早く引退したいと言いながらも、
我々が次の世代に何か遺産を託さなければならないとするならやはり平和が一番だ。
そして前の世代から手渡された平和を維持するのは次の世代の責任だ。
それぞれの世代が後の世代への責任を忘れないでいれば結果として長期間の平和が保てるだろう。
こういったセリフがサラリと出てくるところがまたニクイ。
戦場でもその冴えない飄々とした態度は変わらない。
かと思えば、味方のピンチのときに、
心配するな。
私の命令に従えば助かる。
生還したい者は落ち着いて私の指示に従って欲しい。
我が部隊は現在の所負けているが要は最後の瞬間に勝っていればいいのだ。
負けはしない。
新たな指示を伝えるまで各艦は各個撃破に専念せよ。以上だ。
といったことを言ってのける頼りになる上官。
この辺のギャップもいいんですよね~。
また、何気に政治観には熱いものを持っており、普段は温和なのに権力者などには辛辣で容赦がない。
(独裁者が生まれるのは)民衆が楽をしたがるせいだと。
自分達の努力で問題を解決せずどこからか超人なり聖者なりが現れて全部一人でしょい込んでくれるのを待っていたからだ。
そこをルドルフ(帝国の初代皇帝)に付け込まれた。いいかい?覚えておくんだ。
独裁者は出現させる側により多くの責任がある。
積極的に支持しなくても黙っていれば同罪だ。
ヤンのこの度々出て来る政治論や人生論は大好物です。
こういったヤンの発言は今の社会に当てはまることも多く、SFアニメ好きでなくても楽しめるポイントです。
銀河英雄伝説 Die Neue Theseのひとこと感想まとめ
銀河英雄伝説はヤンを筆頭とした魅力あるキャラの群像劇と美麗な艦隊戦が楽しめる作品。