
この作品を見ると現代社会問題が頭にちらつくすやまたくじです。
今回はそんな現代社会問題にも通じるファンタジーアニメ『魔法使いの嫁』の感想レビュー評価・考察を。
この記事で分かる目次
魔法使いの嫁とは?
- ジャンル:ファンタジー、感動ドラマ
- 放送期間:2017年~2018年・全24話、2016年に全3話のOVA版もあり
- アニメーション制作:WIT STUDIO
- スタッフ:長沼範裕、高羽彩、加藤寛崇、松本淳一
- キャスト:種﨑敦美、竹内良太、遠藤綾、内山昂輝、井上喜久子
- 原作:漫画・ヤマザキコレ
孤独が交わることで紡がれる物語。
生まれつき人外のものが見える主人公:羽鳥智世(はとりちせ)
チセはこの能力のせいで家族に裏切られ、親戚からもたらい回し、そして他人からも疎まれていた。
そんな不幸と孤独から自暴自棄となり、チセは闇のオークションで自分を売ることを承諾する。
イギリスの地に渡ったチセに待っていたのは人外の魔法使い:エリアスとの出会いだった。
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孤独な少女:チセが出会ったのは人外の魔法使い:エリアス
なんでもいい。ただ帰れる場所が欲しい…。
子供の頃から続く不幸と孤独から自暴自棄になったチセは謎の男の誘いに乗ってイギリスに行くことに。
そこで交わされた契約は自分自身をオークションで売るというもの。
なんでもいい、帰れる場所が出来るのなら。
君は魔法使いの弟子になったのさ。
絶滅寸前、時代遅れの、が付くけどね。君を買ったのは勿論弟子にするつもりでもあるけど僕は君を僕のお嫁さんにするつもりでもあるんだ
そんなチセを競り落としたのは異形の姿をした人外の魔法使い:エリアス。
エリアスは妖精や怪異を惹きつける特殊な魔法的性質『夜の愛し仔(スレイ・ベガ)』を持つチセを魔法使いの弟子とし、そして嫁にするという。
というわけで、魔法使いの嫁というタイトルに繋がるわけですね。
ちなみに人身売買で競り落とした&嫁という展開からいかがわしい雰囲気も感じますが、そういうことは一切ありませんので安心してください。
そして、期待していた人にはざんねんなお知らせです(笑)
周りと触れ合うことで生きる意味を見つけていく
少し前までは自分がこんな暖かい場所にいることなんて想像もできなかったのに…。
だけど、今は…。
エリアスと出会ったことで帰る家と家族を手に入れたチセ。
ここからチセ・エリアス・家事妖精のシルキー、そして後に使い魔となるブラックドッグ:ルツとの生活が始まります。
最初は過去の経験からネガティブな思考も目立ちましたが、エリアス達と触れ合う内に少しずつ前向きになっていく。
羽鳥チセ。君は自由だ。
また、エリアスの知り合いやチセのスレイ・ベガの力に惹かれて集まる怪異や妖精といった人外の者たちとの出会いもチセを成長させていく。
画像はアイスランドにある竜の国で出会ったドラゴンと触れ合っているシーン。
魔法使いの嫁ではこういったファンタジーな生き物が人間に隠れて暮らしているのが特徴。
なんでも一人でやろうとしない事。
何のために力を貸してくれる隣人がいるのさ
もちろん、ファンタジーな生き物だけでなく人間とも出会います。
チセと同じく人外の存在が見える魔術師(魔法使いとはまた別物)やそれ以外の人達なども。
人ならざるエリアス達と違い、同じ時間を生きる人間としてチセの力になってくれる存在。
孤独だったチセに少しずつ繋がりが増えていく。
舞台は現代社会+ファンタジーな世界観のイギリス
物語の舞台となるのはイギリス、その中でもイングランドになります。
現実世界の海外が舞台という作品は珍しい方ですが、その中でも日本人が主人公でとなるとさらに珍しい部類ですね。
エリアスやチセが住む家はイングランドの端っこにありますが、買物や用事などでロンドンなどの街に出ることもあり。
正確な時代設定は不明ですが、電車や飛行機などが存在することから現代、もしくはそれに近い時代でしょう。
ちなみに画像のように街の中にも妖精や怪異は姿を隠して存在します。
世界観的には現実社会をベースとしたローファンタジーですね。
原作漫画とアニメ版を比較
- 作者:ヤマザキコレ
- 掲載誌:マッグガーデン『月刊コミックブレイド』⇒月刊コミックガーデン
- 連載期間:2014年~
原作9巻までをアニメ化。
ストーリーに関しては大筋は同じですが若干細かい部分や演出を変化させていますね。
また、放送当時はアニメ終盤は原作未消化だったため、そこが一足先に描かれる形になっています。
比較すると絵柄もちょっと違いますね。
チセはもちろん、エリアスなどの他キャラクターもアニメと比べると原作マンガでは少し幼い感じに見える。
チセに関しては原作漫画よりもアニメ版の方がより暗い雰囲気が強調されている形に。
他にも脇役に関してはデザイン自体が若干変更されているキャラクターもいます。
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魔法使いの嫁の独自評価・考察
今までの王道ファンタジーやダークファンタジーとも違う。
魔法使いの嫁を一言で評すならそんな感じですね。
また、現代の社会問題に対する一つの答えを示している作品だとも感じます。
それらについて詳しく解説していきます。
神秘的なのに残酷なファンタジー
自分はセルキー!
尊き海の民でありますれば人とアザラシ、両の姿を持つものなのですよ
魔法使いの嫁の見所の一つが神秘的でキレイなファンタジーシーン。
王道ファンタジーが好きな僕としてはこういった場面は大好物。
特に画像のセルキーが出てくるシーンなんかは毎回楽しませてもらいました。
この王道ファンタジーな綺麗さだけでも成立するレベルです。
だけど、魔法使いの嫁はそれだけでは終わらない。
馬鹿…返事もしてないのに…ほんとに人間って…馬鹿ね…我儘ね…
まず悲しい話を入れてくる。
というより、楽しいシーンやキレイなシーンよりも悲しいエピソードの方がメインとなっているほど。
他の王道ファンタジーでも悲しいエピソードは随所に入ってきますが、それをメインとしている点が魔法使いの嫁の大きな違いですね。
綺麗の中に悲劇を混ぜるのではなく、悲劇と神秘を融合させたような形で。
どうして…どうして…どうして…どうしてー!!
それに加えて、神秘や綺麗さとは無縁なドロドロとしたダークファンタジーのような暗い話も混ぜてくる。
チセの冒頭の登場シーンや過去の話なんかもここに入る。
日常のほのぼのとした雰囲気と神秘的なファンタジーとの差が激しく、ここがドスン!とカウンターのように感情を揺さぶってくる。
魔法使いの嫁は王道ファンタジーな世界観や雰囲気をベースに悲劇やダークファンタジーを織り交ぜてくる作品ですね。
チセとエリアスの変化していく関係
世界観とは別におもしろいのが時間の経過と共に変化していくチセとエリアスの関係性。
最初はエリアスの見た目やお金が買われたということもあってよそよそしい二人ですが、時間が経つにつれて親密となっていく。
まずは親子のように。
年が離れていてチセが家族と帰る場所が求めていたこともあり、エリアスがチセの保護者のような関係性になっていく。
そしてさらに時間が経つことで恋人のような夫婦のような関係に変化していく。
タイトルのこともあるし、ここまでは予想できた範囲。
予想できなかったのはここからさらに関係性が変化していくことですね。
最初はエリアスがチセを守り教えていく存在だったのが、後半に入ってくるとその立場が徐々に逆転してくる。
主要人物の関係性がここまで変わる作品も珍しい。
また、親密になればなるほどそこから孤独・嫉妬・束縛・依存といった負の感情も生まれてくる。
この負の感情が二人の関係性をさらに変化させ、そしてより自分自身と相手に向き合うキッカケとなる。
現代社会は人との繋がりが希薄となり、その経験不足の影響で人との付き合い方が分からないという人も多い。
魔法使いの嫁では、人間関係が希薄だったチセとエリアスなどんな風に関係を深め、そして嫉妬し依存し、その問題をどう乗り越えていくかも描かれている。
そんな人間関係に悩む人に対しての一つの答えを示しています。
理不尽な仕打ちに憎しみで応えない
チセって序盤から最後までガンガン理不尽な仕打ちに見舞われるのですよ。
オークションで売られたのは自分の意志(自暴自棄になっていましたが)だとしても、その後にも直接向けられた悪意に加え、完全に巻き込まれたものから世界に試されるような抵抗できないものまで。
で、それに対してチセはほとんど怒りを見せないのですよね。
もちろん、その場では怒りを見せたり戦ったりするのですが、それが済んでしまうとその相手が目の前にいてもすぐに平常運転に戻るような感じで。
普通は相手に嫌なことをされると怒りや悲しみを引きずってそれが憎しみと変わることもある。
これってリアルではもちろん、漫画やアニメのキャラクターでもよく見られることです。
なのに、チセにはそれがない。
ある意味、淡泊にも見えるこの受け止め方は最初は自暴自棄になっていたこともあり、自分の身を大切にしていないからかなと思ったのですよ。
でも、話が進んでくれるとどうやらそれだけが原因ではなさそうだ。
そんな疑問を解消してくれたのが以下のセリフ。
許さないよ。
許さないけど…私はまだあなたを忘れないけど
あなたを置いて…前に進むよ
チセが幼少時代を除き、相手にやられたことに執着しないのはこのためかなと。
やられたことは決して許さないし忘れないけど、自分が前に進むために怒りや悲しみは置いていくよと。
現代社会でも理不尽なことは多い。
人間関係はもちろん、ときには国や社会といったどうしようもないことが原因で不幸になることもある。
そんな現代社会問題にも通じる一つの答え。
魔法使いの嫁が綺麗な話だけでなく悲しい話やダークファンタジーな展開を混ぜてきたのは、こういった不幸や理不尽を受け入れ、前に進む姿を描きたかったからなのかなと感じました。
魔法使いの嫁のひとこと感想まとめ
魔法使いの嫁は王道ともダークとも違うファンタジーが見れる作品。
また、人間関係や理不尽との向き合い方といった現代社会問題に通じる一つの答えも。