
ジミヘンことジミ・ヘンドリスクのことは名前しか知らなかったすやまたくじです。
今回はそんなジミヘンが登場する音楽青春漫画『SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス)ジミなわたしとヘンなおじさん』の感想レビュー評価・考察を。
目次
SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス)ジミなわたしとヘンなおじさんとは?
- ジャンル:音楽、青春、学園
- 作者:長田悠幸、構成協力:町田一八
- 掲載誌:月刊ビッグガンガン
- 連載期間:2013年~
27歳が終わるまでに伝説を残さないと死ぬ。
地味な英語教師の身に降りかかった突然の出来事。
伝説のギタリスト:ジミヘンの力を借りて、たった一年でこの世に伝説を残せるだろうか?
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地味な先生が伝説のギタリスト:ジミ・ヘンドリクスに憑依された
私は本田紫織(ほんだしおり)26歳
いわゆる進学校といわれるここ三菱学園(みつびしがくえん)の地味で平凡でちょっぴり貧乏な英語教師です
趣味は家事と節約
夢は…幸せなお嫁さんになって幸せな家庭を築くこと―――
こちらがタイトルにも名前が入っている主人公:本田詩織
地味で平凡で生徒や学園長にすら名前を覚えられておらず、地味先(じみせん)というあだ名を付けられるほど存在感がない女性。
漫画の主人公というよりなんだかモブキャラといった感じですね。
そんな紫織の誕生日一日前。
目の前に謎のアフロのおっさんが現れた。
その人こそ、27歳で謎の死を遂げた伝説のギタリスト:ジミヘンことジミ・ヘンドリクスだった。
知らない人のために簡単に解説すると、ジミヘンとは1960年代にアメリカで活躍したギタリスト。
死後も世界中のミュージシャンに影響を与えたロックのパイオニアの一人です。
27歳が終わるまでに伝説を残さなければ死ぬ
そんなジミヘンが目の前に現れた次の日は紫織の誕生日会…ではなく、学校の三年生を送る会。
ジミヘンショックで遅刻した紫織の前で行われていたのは昨年の全日本コンクールで金賞に輝いた吹奏楽部の特別バージョンの演奏。
ギターなどの普段は使わない楽器を取り入れ、ポップスをジャズ風にアレンジした演奏に紫織も圧倒され周りがべた褒めする中、
魂の叫び(ブルース)を感じねぇ…
と、一人不満げなジミヘン。
もう我慢できない!と紫織に憑依してライブに飛び入り。
伝説のギターテクニックで会場を沸かせることになります。
ちなみに周りの人にはジミヘンの姿は見えず、紫織がジミヘンのような超絶テクニックで演奏しているように見えます。
いくら相手が全日本コンクールで金賞を取った吹奏楽部とはいえ、世界を虜にした伝説の前では相手にならない。
紫織の登場と共に吹奏楽部を脇役に追いやり、会場中の視線を独り占めすることとなります。
私は本田紫織27歳
いわゆる進学校といわれる三菱学園の地味で平凡でちょっぴり貧乏な英語教師です
趣味は家事と節約
夢は…すてきなバンドを組んでステージでライブをすること―――でした!
ジミヘンの演奏という熱い魂に触れて思い出した紫織のかっての夢。
家の事情で忘れてかけてたもの、あきらめて閉じ込めてた本当にやりたかったこと…。
その全ての熱い気持ちを思い出し、ジミヘンの憑依が解けた後も自分でギターを演奏し続ける。
本当の夢は幸せな家庭を築くことじゃない、バンドを組んでライブをすることだ!と叫ぶように。
もう契約破棄はできねぇぜ?
一度“JACK in”で超絶ギターテクを体験(エクスペリエンス)した者は…27歳が終わるその日までに伝説を残さなければ死ぬ―――ってな
そんな素敵な体験をした代償は命をかけること。
一度憑依を体験した者は27歳が終わるその日までに伝説を残さなければ死ぬと宣言される。
27歳の誕生日に送られたプレゼントは命がけのサクセスストーリー。
たった一年で紫織は伝説を残せるのか?
SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス)ジミなわたしとヘンなおじさんの独自評価・考察(ネタバレ注意)
昭和を感じさせる王道青春ストーリー×音楽界の伝説。
シオリエクスペリエンスの評価をまとめるならこんな感じですかね。
ここからはそこに注目して感想や考察を語っていきます。
また、ここからはネタバレを含むため注意してください。
どこか懐かしい王道的な青春ストーリーが熱い
シオリエクスペリエンスのストーリーはどこか懐かしさを感じる。
最初は伝説を残すために学校を辞めてバンド活動に専念するのかな?と思ったのですが、家の事情と金銭面から教師を続けながら活動することに。
そのために軽音部を立ち上げて部員を集めていくことにしたのですが、ビラ配りはうまくいかないは周りにバカにされるは邪魔も入るはで…。
さらに学校からも軽音部設立を認められず家では親がバンド活動を許さない。
昭和かっ!?
とツッコミたくなる厳しい展開が続きますw
昭和のドラマやスポ根漫画などではこういう逆境の連続はよく見ましたが、最近の作品はこういった部分はゆるく描かれたりシーン自体がカットされることが多いですからね。
この学園では学力だけでなくどの部活に所属しているかで身分(ステータス)が決まるところがありまして…
そのステータスが大学進学や就職…そして交友関係などさまざまなものに大きな影響をおよぼすんです
さらに、舞台となる学園が最近のスクールカースト真っ青の状態。
所属する部活でステータスが決まり、それによって交友関係なども決まる(上の画像のように所属する部活で偉そうな態度を取ったりする)
これから立ち上げようとする軽音部は農民で結果を出しているサッカー部や吹奏楽部は大名って、
昔かっ!?
とこちらもツッコミたくなる武士社会のような身分制度。
そして、それを得意気に語っているのが帰宅部という点もイラッとくるw
いやいや、無所属の君達は軽音部よりも下でしょと。
私たちとあなたたちクソ軽音部を一緒にしないでいただけますか?
他にも、画像の吹奏楽部顧問のすばる先生も昭和を感じるさせるようなクセモノ。
日頃はテヘペロとか平気でするぶりっ子キャラで男子生徒や男性教員のハートをガッチリと掴み、吹奏楽部で結果を出しているカリスマ性から女子生徒の人気も高い。
が、性格は分かりやすい腹黒でたびたび紫織に辛辣な言葉を投げかけたり時には妨害までしたりしてくる。
私 軽々しく「全国優勝」なんて口にされるとムカッ腹が立って全身に虫唾が走りやがりますの
二度とおっしゃらないでいただけます?
しかも、怒りのボルテージが上がるとこちらの画像のような鬼の表情まで見せる。
ちなみに、吹奏楽部の練習の時はだいたいこのモードでその時はさらに関西弁になるというタチの悪さ(よく部員は黙って従っているなと)
でも、周りの評価は高いのですばる先生と対立することになったら紫織の方が必ず悪者にされるという昭和によくいた分かりやすいいびりキャラとなっています。
まあ、この人にもこの人なりの信念があるみたいですがそれにしてもね…w
こういった設定やストーリー展開、さらに紫織などのキャラがちょいちょい仮面ライダーやウルトラマンのようなポーズを取るなど、敢えて昭和感を出しているのが特徴の作品。
そして、この今はあまり見ない昭和の王道感が逆に新鮮で熱いのですよね。
スポ根要素も感じるバンド活動が熱い
私とバンドやりませんか?
昭和の王道ストーリーを感じさせるシオリエクスペリエンスのメインとなるバンド活動は当然バチバチに熱い。
こちらは音楽という名のスポ根ですね。
スポ根漫画でよく見る展開を音楽という違うジャンルに落とし込んでいるような展開。
吹奏楽部の三軍すらクビになった落ちこぼれのサックス担当:井鈴茜(いすずあかね)を勧誘して軽音部を立ち上げたり、
ずっとこの瞬間(とき)がくることを
信じて夢見ててくれだんだね―――
すれ違いからずっと距離を置いていたボーカル担当:目黒五月(めぐろさつき)とピアノ担当:川崎忍(かわさきしのぶ)が音楽を通して再び友情を深めたり、
軽音部の活動を見てずっと自分を誤魔化し続けていたドラム担当:台場初範(だいばはつのり)が好きなことをする決心を固めたりと。
どのキャラクターにも王道的な熱いドラマが用意されている。
そんなメンバーが集まっていざライブへ。
オリジナル曲を作り、自信たっぷりで演奏した曲は、
誰にも届かなかった…。
この辺のシビアさは青年誌らしい。
少年マンガやアニメだったら最初からうまくいったり、うまくいかなくても何かしらの成果を残すものですが、シオリエクスペリエンスではそういったものは一切なし!
この辺はリアル路線ですね~。
それだけで終わらず他のバンドの演奏を見て打ちのめされる。
伝説をなめんじゃねーよ
落ちこんでいる紫織にさらにジミヘンが追い打ちなど、どんどん畳み掛けてきます。
日頃は変なおじさんなのに音楽に関しては本当に熱い男。
…許せない
みんな(バンド仲間)のことを(すばる先生に)あんなふうに馬鹿にされて…笑われて…
それなのに何ひとつ言い返せなかった自分が
許せない……
そして、先ほど登場したすばる先生にもケチョンケチョンに言われるなど、ライブデビュー戦は散々な一日となります。
最初に打ちのめされてその悔しさをバネにして立ち上がる。
これもスポ根漫画の王道パターンですね。
ここから猛特訓で這い上がって姿は音楽というよりまるでスポーツのような激しさ。
その鬼気迫る姿がまた熱い。
ジミヘン・ニルヴァーナなどの伝説が熱い
一番愚かなのは自分の“魂の叫び(ブルース)”に従わないことだ
シオリエクスペリエンスが他の音楽漫画と大きく違うのはジミ・ヘンドリスクという本物の存在。
なにしろリアルの有名人が実名で登場して、それが準主人公のように活躍するわけですから。
随所で入れてくるロックな名言など、たいして音楽に詳しくない僕でもなんだかおおー!となる存在。
シオリエクスペリエンスの世界でもすでに過去の人ですが、そのギターテクはジミヘンを知らない世代すらも惹きつける。
さらにその伝説を知っている人は感動して号泣することも。
最初はギャグっぽかったこのジミヘンの存在がストーリーの進行と共にどんどん大きなっていきます。
ニルヴァーナのカート・コバーン
27歳で死んだ伝説のミュージシャンさ
さらに衝撃を受けたのが3巻終盤に他の伝説ミュージシャンが登場したこと。
こちらは1980年代後半から90年代前半に世界を席巻した人気ロックバンド『ニルヴァーナ』のボーカル兼ギタリストのカート・コバーン。
このカートの登場によって物語の流れがかなり変わりましたね。
目を閉じればはっきり見える…
俺たちロックファンの妄想が現実となった
奇跡の光景が…
そして、6巻で行われたこのジミヘンとカートのセッションは激アツの展開。
ジミ・ヘンドリスクもニルヴァーナも名前しか知らなかった僕でもちょいと戦慄が走りましたから。
紫織の手柄ではないとはいえ、もはやこれで伝説達成と言っても過言ではないぐらいの熱いライブシーン。
聞いて驚くなよ
ジミやカートのように27歳で死んだ伝説のミュージシャンを集めた最強バンド「The 27 Club」を作るのさ!
神秘的なバリトンボイスや過激なパフォーマンスで一世を風靡した孤高の天才詩人
「The Doors」ジム・モリソン女性初ロックシンガーと呼ばれ1960年代を代表する魂のヴォーカリスト
「歌姫」ジャニス・ジョプリンギターだけでなくあらゆる楽器を弾きこなす「ローリング・ストーンズ」を作った男
「鬼神」ブライアン・ジョーンズ今なお多くのミュージシャンに影響を与え続けるパンクロックヒーロー
「NIRVANA(ニルヴァーナ)」カート・コバーン「歴史上もっとも偉大な100人のギタリスト」第1位の座に君臨し続ける
「ギターの神様」ジミ・ヘンドリクスこの伝説の人物たちが一堂に会し、誰もが一度は夢見た幻の共演(ステージ)を実現させるんだ!
しかも、伝説はこれで終わらない。
カート・コバーンがジミヘンをバンドに勧誘。
その最終目標は27歳でこの世を去ったドアーズのジム・モリソン、「歌姫」ジャニス・ジョプリン、「ローリング・ストーンズ」を作ったブライアン・ジョーンズも集めて27クラブ(トゥエンティセブンクラブ)を結成することだと言う。
音楽ファンはもちろん、そうでない人でもこの展開はこれはテンション上がるでしょう!
ジミヘン達の伝説と紫織が結成するバンドの伝説。
この2つがどう交錯していくのか?
これを想像するだけでもワクワクする作品です。
2010年代の作品ですが彼らが実際に活躍していた1960~1990年代の音楽シーンを知っている人にもおすすめしたい作品です。
SHIORI EXPERIENCE(シオリエクスペリエンス)ジミなわたしとヘンなおじさんのひとこと感想まとめ
シオリエクスペリエンスは昭和ドラマ的な青春と伝説ミュージシャンの音楽が熱い。
ぜひアニメ化して欲しいけれど、権利的に無理そうだよね。